嶺岡牧を管理した牧士の暮らしに迫る江戸時代に建てた蔵に残された食具南房総市 千葉県酪農のさと

 千葉県酪農のさとで、ミニ企画展「食具が語る嶺岡牧士家の暮らし」が8月1日から行われている。

 嶺岡牧が江戸幕府直轄4牧の1つであった江戸時代に、現地で牧を管理したのが牧士。江戸時代前期は、中世に地域を支配していた小領主クラスの家を牧士に任命していたが、八代将軍徳川吉宗が一時中断していた嶺岡牧を再興してからは村の有力農家も牧士に任命するようになり、延べ16家が牧士として嶺岡牧の管理を行った。今回は、嶺岡牧が正木・里見氏の氏牧であった時に、嶺岡牧を管理する長官にあたる御厩別当家で、「御厩」が屋号となっている鴨川市坂東の石井家に残されていた食具を展示している。

 2019年に襲った台風15号で、石井家の土蔵の屋根が一部壊れた。石井家の土蔵は、岩本正倫により全国に先駆けて近代酪農が嶺岡牧で行われていた江戸時代後期の文化14年(1817年)に建てられた文化遺産。土蔵内に牧士であったときの民具が多数残されていることから、千葉県酪農のさとが養成した嶺岡牧スチュワードのメンバーがレスキューを目的とした緊急調査を実施した。その結果、30を越える銘々膳や、多数の漆器の椀などが確認された。多くの銘々膳は、江戸幕府で牧を管理する役人が嶺岡牧に来たときの接待や村のまつりごととして宴会が行われていた牧士の暮らしを反映している。そこで、牧士の社会的位置づけや、暮らしに迫ることを目的として展示することとなった。

 世界遺産級の嶺岡牧を理解する上で不可欠な牧士家の文化遺産が次世代にも受け継がれるようにするため、保存修復の基礎データとなる、民具のデータ整備と、土蔵の実測を進めている嶺岡牧スチュワードは、早い修復保存措置が必要であることを指摘している。

 
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